Netflixで配信中の「マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~」の視聴感想です。
IUちゃんが主役で気になっていたものの、「おじさん」と入っている題名が私の観る意欲を著しく削いでしまい今まで手を出さず…笑。でも本当に観て良かった!
暗く重い展開にめげそうになり、胸が苦しくなり、そして徐々に夢中になり、くすりと笑い、おんおん声を出して泣き、やがて心が満たされる…。
主役の二人のみならず、全ての登場人物の人生が切なくて悲しくて愛おしい。
そんなドラマでした。
イ・ソンギュンが「パラサイト~半地下の家族」とはまた違った「哀愁を帯びた40代」を熱演。←ものすごくかっこいいです。
隅から隅まで、大勢の実力派キャストを揃え、その中心にIUを据えたのが大正解。彼女もまた「アイドル」から一皮むけた名演で、主役として完全にドラマを掌握していました。必見!
マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~ キャスト・スタッフ・あらすじ
2018年 全16話
あらすじ
建設会社で働くドンフン(イ・ソンギュン)に、ある日、差出人不明の5000万ウォンの商品券が届く。直前に母から、無職の長男のために、家を売って食堂をやらせたいと相談されたドンフンは、それを受け取ってしまう。翌日、ドンフンは匿名の告発を受けた監査部から調査を受けることに。しかし、商品券は彼の机からこつ然と消えており、ドンフンは答えに窮する。すると、突如商品券がビルのゴミ置き場から見つかる…
ドンフンは「5000万の商品券を捨てた男」として社内で英雄扱いされることに。商品券を捨てたのは契約社員のイ・ジアン(IU/アイユー)だと知ったドンフンは、自分が捨てたことにしてほしいと彼女に頼む。すると、ジアンから交換条件として1ヶ月間食事をおごってほしいと言われてしまう。
実は、ジアンは、ドンフンの妻ユニ(イ・ジア)と不倫関係にある社長ト・ジュニョン(キム・ヨンミン)からお金をもらうため、ドンフンを陥れようとしていた。そうとは知らないドンフンは、ジアンに関わるうちに彼女が多額の借金を抱えていることや、孤独な人生を歩んできたことを知り、少しずつジアンを助けるようになる。
そんなドンフンの優しさに触れるたびに、ジアンの心は少しずつ揺らぎはじめ…。
キャスト
- ドンフン:イ・ソンギュン「パラサイト」
- イ・ジアン:IU アイユ「麗ー花萌ゆる8人の王子たち」「ホテル・デルーナ」
- サンフン(ドンフン兄):パク・ホサン「刑務所のルールブック」
- ギフン(ドンフン弟):ソン・セビョク
- ト・ジュニョン(社長):キム・ヨンミン「愛の不時着」
- ユニ(ドンフン妻):イ・ジア
- ドンフン母:コ・ドゥシム「椿の花の咲く頃」「上流社会」
- イ・グァンイル(借金取り):チャン・ギヨン「ここに来て抱きしめて」
- ナラ(女優):チェ・ユラ「梨泰院クラス」
スタッフ
演出:キム・ウォンソク「成均館スキャンダル」「シグナル」「ミセン未生」
脚本: パク・ヘヨン「また!オ・ヘヨン」
暗く重い序盤
名作中の名作「ミセン」の監督と、「また!オ・ヘヨン」が好評だったパク・ヘヨン脚本家がタッグを組んだ作品。物語へのアプローチが本当に新鮮で、多くの登場人物を誰一人として無駄にせず生かし切る脚本が見事でした!
まずタイトルから何となく「足長おじさん的な甘ったるいヒューマンドラマ」を想像していた私は、人生の殺伐とした部分を全部詰め込んだような第一話に不意打ちされました。そうか、そうきたか。甘くはないのね。
犯罪に暴力、失業と貧困、競争社会、格差社会…人生のレールを外れた人々の生き辛さ。初回から全ててんこ盛りです。
IU演じるイ・ジアンはまだ21歳。
しかし不遇な環境で育ってきたため人を信じられず、世の中に絶望しています。借金の返済をしながら唯一残った肉親である祖母を養うため、いくつもの仕事を掛け持ちし、時には犯罪まがいの事にも手を出しながら、何とかその日を生きています。
キラキラ歌手オーラは完全に消し去ったIUの存在感↓
決して人を信用しない野良猫みたい。手を出したら引っかかれそう~
一方イ・ソンギュン演じるドンフン。
大手建設会社で働く40代のサラリーマン。愚直で不器用な生き方のせいで、会社では万年部長で出世できず、妻は浮気をしている。3兄弟の真ん中だが、兄と弟は失業中で、年老いてきた母の事も気がかり。真面目に生きてきたが、どこか虚しい日々を過ごしています。
3兄弟で飲みながら、ドンフンの弟ギフンが言います↓
兄さんは昔からいつも一番かわいそうだ。
欲望と良心の間で苦しみ、
いつも良心を選ぶ。
哀れだろ?
↑このセリフでドンフンのキャラを全部説明してしまう巧さよ!
こうやって書いてみると、主役なのにとっても地味なキャラ二人。この二人が辛いばっかりの序盤ははちょっと観るのもしんどいですが、ここでリタイアせずに是非続きを!!
ここから下、ネタバレ感想です
無口な二人
一見全く違う境遇にいるジアンとドンフンですが、ただただ人生の理不尽さに流されながら生きているという共通点があります。二人とも基本的に無口で、感情表現も苦手。
そんな二人の人生が、ふとしたことから交錯し始めます。
前述のとおり無口な二人が主人公なんでね…ほんとセリフも最小限です。
↑監督から「抑えて、抑えて演技して。もっと抑えて。」と散々指示されたそうです。で、ほぼ無表情の二人…。演出にかなりこだわりがあると有名なウォンソク監督のこの演出が、後半で生きてきます。
序盤は、ドンフン務める大手建築会社の社内抗争を軸に、賄賂や謀略を巡ってのサスペンス的な展開です。↓見よ、この曲者揃いの面々を!ちょっとミセンを彷彿とさせますね。
社内抗争に絡み、ドンフンの会社の社長ト・ジュニョンは、金目当てに近づいてきた派遣社員のジアンを使って、ドンフンを陥れようとします。
↓ト・ジュニョンを演じるのは「愛の不時着」耳野郎ことキム・ヨンミン。今回はどこまでも嫌な奴でした。(実はドンフン妻の浮気相手)
ト・ジュニョンに買収され、ドンフンの弱みをつかんで陥れようと近づくジアン。
しかし盗聴し監視して素顔のドンフンを知るにつれ、ジアンに徐々に迷いが出てきます。
ここら辺から、イ・ソンギュン演じるドンフンのカッコよさが際立ってきます!!!視聴者もジアンと一緒に、徐々にドンフンの事を知るのですよね。
感情をあまり表に出さず人生諦めたようなおじさんだと思っていたのに、自分を押し殺すように生きるドンフンの素顔は、実はどこまでも誠実で、情が深く、温かい人。
ドンフンもジアンの辛い境遇を知り、少しずつ彼女の事が気になってきます。
親子ほどの歳が離れた二人の不思議な信頼関係が少しずつ出来上がっていき、カチカチに固まっていたジアンの心が徐々にほぐれていく過程が、みていて嬉しい(*´з`)
そしてジアンは父親ほど年の離れたドンフンにいつしか恋するように。
そりゃそうなるよね!
私だって惚れるわーーー!というほど素敵です。
でもドンフンはジアンを決して女性としては見てないのですよね。
気遣いながらも、常に突き放した感じすらして。
上司と部下として?ただ目の前にいる、辛い思いをしているジアンを放っておけないドンフン。父性愛的な感じでしょうか。そのドンフンの圧倒的清潔感が良かった~✨
全ての登場人物が切なくて、悲しくて、愛おしい
16話のドラマですが、1話が80分くらいあって長いです。その長さを無駄にせず、登場する人すべての心情を細やかに描いています。
特にこの三兄弟!↓
あまりに個性が違うキャスト3人で、ちぐはぐになってしまわないか撮影前は心配したと語っていたイ・ソンギュンですが、これがぴたりとハマっていました!
兄弟の絆の強さよ。都合の悪いことも、カッコ悪いことも、情けないことも、お互い常に何も隠そうとせず、兄弟で助け合う姿がこのドラマの何よりの癒しでした。
兄サンフンを演じたパク・ホサン、弟ギフンを演じたソン・セビョク。この二人の名演が素晴らしかった!!
↓一見だらしなく情けない兄サンフンだが、家族への愛情だけは確かで、情に厚く涙もろい優しい人。色んなドラマでよく見かける名脇役パク・ホサン。つかみどころのないホサンを、超自然体で演じていました。
↓ずーーーっと怒ってる三男ギフン。元映画監督。毒舌で激情的だが、実は洞察力に優れた思慮深い人物。ソン・セビョクは何とドラマ初出演!ずっと映画界の人だったのかな?
このソン・セビョクが良いのか、それともギフンというキャラが良いのか、自分でもよくわからなかったけど(←笑)とにかく魅力的で目が離せない存在感がありましたー!
映画監督として大成できず、業界の仕事を諦めて兄サンフンと清掃業を始めたギフン。
母親から「高学歴のバカ息子」と呼ばれていますが、隠し切れない知的な雰囲気があり、後半に行くにつれ彼がかっこよく見えてくる不思議。
彼のこの魅力のおかげで、女優のユラとの恋愛も説得力がある展開。ナイスキャスティング!これからはドラマでも大活躍しそう。
↓そのギフンの前に突然現れる女優のユラ。梨泰院クラスを観た人にはお馴染みのスアですよ!ナラちゃん、スアよりよかったよ~。
ユラはド天然で奔放な振る舞いでギフンを翻弄。繊細かと思いきや実はド根性の持ち主、そして突拍子もない言動もあったりとなかなか破天荒なキャラでしたが、でもなぜか憎めない…。
ギフンとユラの恋愛は、行く末が一番気になったサイドストーリーでした。
↓ドンフンの妻、イ・ジアが演じたユニ。
こんなに素敵な夫がいるのに!!なぜ浮気を~💦‥‥と思いながらみてましたが、後半にいくにつれ、分からないでもないかなぁ、と。夫とその家族(3兄弟ね)との強い絆に、自分はいつまでも入り込めない疎外感を感じ、どこかで自分を一番に尊重してくれる人を求めていたのかなぁ。
イ・ジア、相変わらずキレイでした↑
↓エリート人生を捨てて、若くして突然出家してしまったドンフンの親友ギュンドクをパク・ヘジュンが演じました。俗世でもがき悩み生きるドンフンらと対照的な存在として描かれ、ドラマのスパイスでしたね。
出家してしまえば楽になれるのか?否、ギュンドクもまた、何をすべきなのかどうすべきなのか、悩みながら生きる様子が描かれます。出家して達観したようなキャラではないところが良かった。
↑パク・ヘジュンはミセンでもアスダル年代記でも、どちらでも私のお気に入りでした♥
↓そのギュンドクを長年待ち続けるジョンヒ。同級生皆が集まる飲み屋の陽気な女主人の彼女も、実は切実に一緒に生きてくれる人を求め続ける、切ない役でした(T_T)
彼女のエピソードが、一番身につまされたような気もします…。
他にも下町フゲの人々、ジアンの祖母、友人、3兄弟の母など、みな芸達者で「私のおじさん」の世界観を描き切るのに大切な役割を果たしました。
↓ジョンヒの店に夜な夜な集う面々。
ユラの言葉を借りれば「落ちぶれた人々」。
しかし彼らが落ちぶれても笑顔でいられるのは、仲間との繋がりがあるから。
それを決して傷をなめ合うような惨めな描き方をせず、そこにあるささやかな幸せをしっかり享受し、辛い人生を自身で鼓舞して前向きにたくましく生きる彼らの姿が最高♪
この全ての人が、ドンフンを通じて、ジアンと繋がってゆきます。
その描き方も秀逸でした!
マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~ワタシ的ベスト名シーン
借金取りグァンイルを演じるのはチャン・ギヨン。
ジアンとグァンイルの、この二人の因縁とも言える関係もほんと切なかった…。
「あいつは私が好きだった記憶に苦しみ、
私はあいつが優しかった記憶に苦しんで…」
ジアンを執拗に追い詰め、憎み、殴るグァンイル。しかし愛憎紙一重でジアンから離れられないという複雑な感情を繊細に表現。チャン・ギヨンが好演です✨
「ここに来て抱きしめて」も実はしっかり視聴済みなんですが、彼は心に何かしらを抱えた薄幸な青年役が似合うわー!
ジアンのため、グァンイルに会いに行くドンフン。
なぜ可哀そうな子を殴る?とグァンイルに迫ります。殴り合いになる二人。
「俺の父親を殺したからだ」
思いがけないジアンの過去を知るドンフン。
そして瞬時に理解します。
貧しいだけではない、彼女の抱えている本当の心の闇を…。
そして言います。「俺でも殺す。俺の家族を殴るやつは」
それを聞いていたジアン。
ジアンがどこかで人生を全て諦めている理由、心の奥底に抱えている一番辛い記憶はやっぱりそこだったんですよね。正当防衛とは言え、人を殺めてしまった過去。
誰よりも知られたくなかった人に、それを知られてしまった。
しかし、それを真正面から受け止めてくれたドンフン。彼女の罪を全肯定し「自分でも同じことをする」と言ってくれた。
それまで一度も崩れなかったジアンが泣き崩れます。
もうこのシーン、私も号泣でした(T_T) 号泣、号泣。
ウォンソク監督がジアンとドンフンの抑えた気持ちを思いっきり解放させたシーン。
これが私のこのドラマのベストシーンでした。
マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~まとめ感想
重く暗い始まりでしたが、最終的には「ミセン」同様、最後には「視聴者が望む結末」を、このドラマも見せてくれました!そこがただ単に「地味なヒューマンドラマ」に終わらず、エンターテイメントとしても上質なものになっているところで、さすがです。
兄に土下座させたやくざに立ち向かい、借金取りのグァンイルに殴りかかり、上司(社長)に歯向かい…。これまで事なかれ的に生きてきたドンフンが、家族や大切な人の為に自分を奮い立たせ人生の不条理に立ちむかう姿が、ドラマ後半を大いに盛り上げました。
ずっと耐えてきたドンフンの気持ちが溢れてしまうこのシーンも、次への一歩のために視聴者も観たかった!↓
「なんてことない」
過去の事はなんてことない、と繰り返しジアンに伝えるドンフン。それは自分への言葉でもあったんですよね。
ドンフンに出会い人生を取り戻したジアンですが、観終わってみると、社内抗争に巻き込まれ妻の不倫を突き付けられ、40歳を過ぎて自身のアイデンティティを失いかけていたドンフンを救ったのこそ、ジアンだったのだなぁ…と思います。
「どんな縁も、全て不思議で尊い」
「自分が幸せに生きる事が、恩返しになるのよ」
という言葉を残して亡くなったジアンの祖母。
出会って支えてくれた人々を幸せにしたければ、自分が幸せになること。
これに尽きますね。
その言葉を胸に、幸せになろうと決心したジアン。数年後のドンフンとの偶然の再会では…↓
しっかりと自分の人生を歩み始めたジアン。そのジアンを本当に嬉しそうに見つめるドンフン↓私も観ながら完全にこのドンフンと同じ表情してましたww
人と人との小さな繋がりを全肯定して、生き辛さを感じている全ての人を応援する、まさにヒーリングドラマでした(^^)/
ちょっと人生に疲れたな…という方。是非!!!
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