韓国映画

映画「金子文子と朴烈(パクヨル)」感想

私の評価星4つのおすすめ映画です!

さて、ずっと観たかった「金子文子と朴烈」

あちこちで評判は聞いていたのだけど、上映している映画館が極端に少ない上近所になく、これは配信が始まるまで待つしかないかといったんは諦めていました。が、最近何気なく検索したら、なんと下北沢のミニシアターで上映中。早速観てきました。

↓イジェフンのビジュアルにまず目を奪われるー!

あらすじ・キャスト・スタッフ

【ストーリー】1923年、東京。社会主義者たちが集う有楽町のおでん屋で働く金子文子は、「犬ころ」という詩に心を奪われる。

この詩を書いたのは朝鮮人アナキストの朴烈。

出会ってすぐに朴烈の強靭な意志とその孤独さに共鳴した文子は、唯一無二の同志、そして恋人として共に生きる事を決めた。

ふたりの発案により日本人や在日朝鮮人による「不逞社」が結成された。

しかし同年9月1日、日本列島を襲った関東大震災により、ふたりの運命は大きなうねりに巻き込まれていく。 内務大臣・水野錬太郎を筆頭に、日本政府は、関東大震災の人々の不安を鎮めるため、朝鮮人や社会主義者らを無差別に総検束。朴烈、文子たちも検束された。

社会のどん底で生きてきたふたりは、社会を変える為、そして自分たちの誇りの為に、獄中で闘う事を決意。

ふたりの闘いは韓国にも広まり、多くの支持者を得ると同時に、日本の内閣を混乱に陥れていた。そして国家を根底から揺るがす歴史的な裁判に身を投じていく事になるふたりには、過酷な運命が待ち受けていた…。

(公式サイトより引用)

監督

  • イ・ジュンイク

出演者

  • イ・ジェフン「建築学概論」「シグナル」「明日きみと」「狩りの時間
  • チェ・ヒソ
  • クォン・ユル
  • キム・イヌ
  • キム・ジュンハン「ある春の夜に
  • ミン・ジヌン
  • チェ・ジョンホン

 

大日本帝国時代、関東大震災時の朝鮮人大虐殺という史実を映画化したもので、もっと政治的なメッセージが強い社会派映画かと思いきや、内容は文子とパクヨルという20歳、21歳の若い二人の短くも鮮烈な生き様が主軸となったストーリーで、とにもかくにも主演の二人の生き生きとした大胆な演技に目を奪われ、あっという間の2時間でした。

この二人の魅力的な事!↓

日本政府が二人を朝鮮人大虐殺を正当化するスケープゴートとして仕立てる過程などは、かなり分かりやすく(過ぎるほどに)茶化した描かれ方をしており、当時の日本政府もここまで単純で馬鹿ではなかったろうと思いつつも、限られた上映時間内で事の成り行きと歴史が作られる過程を描く脚本・演出としては、とても秀逸だったと思います。(いや、案外本当に単純で馬鹿みたいに、歴史は作られたのかもしれないけれど。)

そのお陰で大虐殺の史実を伝えながらも映画はエンターテイメント性を失わず、志と信念、そして魂をも共有した二人の愛を描くことに集中できており、私も朝鮮人大虐殺という史実にショックを覚えながらも、それよりもやはり二人の愛のあり様にひたすら心を揺さぶられました!

映画の中、裁判中の最後に文子が滔々と宣言するかのように言うセリフがあります。

私は朴を知って居る。朴を愛して居る。彼に於ける凡ての過失と凡ての欠点とを越えて、私は朴を愛する。そしてお役人に対しては云おう。どうか二人を一緒にギロチンに放り投げてくれ。朴と共に死ぬるなら、私は満足しよう。して朴には云おう。よしんばお役人の宣告が二人を引き分けても、私は決してあなたを一人死なせては置かないつもりです−−−と。

なんとこれ、脚本で書かれたものではなく、実際の裁判記録に残っている金子文子の言葉なのだそう。脚本だったとしてら出来すぎのセリフ、ロマンチックすぎて卒倒しそう。

文子役のチェ・ソヒもインタビューで、「この映画は決して反日映画ではなく、文子とパクヨルの愛の物語だ」というような事を言ってたけれど、私もまさにそういう映画だと思いました。特に同じ日本人であり女性である文子に強く感銘を受け、不遇の子ども時代を過ごし、アナキストとして弾圧を受け、更には獄中死という悲劇の最期を遂げる彼女が、なぜかとてつもなくうらやましく思えました。何という鮮烈な生き方!

迷いのない真実の愛を自ら見つけつかみ取り、それに身を投じ、自分の選んだ道をただひたすらに突き進んだ彼女の強さに、自分だったらどうだろうかと思わずにいられませんでした。

金子文子を演じたチェ・ヒソは文子そのもののようでした。
強い眼差しに愛嬌のあるくしゃっとなる笑顔。粗野な振る舞いに下品な言葉を使っても、凛としたものを失わない品格としなやかさがあって、美しい女優さん!

イ・ジェフンは、「建築学概論」や「シグナル」で、私の中では線の細いインテリ青年というイメージだったのでだけれど、そのイメージを根底から覆すほどの変貌ぶりでした。

最後に、韓国での原題は「朴烈(パクヨル)」だったこの映画に、「金子文子と朴烈」と言う邦題をつけた日本の配給会社に拍手! 正に2人の物語。

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